2016年8月17日 更新

65歳定年延長で賃金制度見直し 現役世代の賃金抑制で総額人件費維持

4月1日の改正高年齢者雇用安定法の施行を前に継続雇用制度を見直す動きが広がっている。労使協定で定める基準の廃止により、希望者全員の雇用を前提とした制度改正行うほか、新たに65歳まで定年を延長する企業も登場している。20万人超の従業員を抱えるNTTグループは、総額人件費を維持するために現役世代の賃金を抑制する。

 改正高齢法の最大の眼目は、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止したことだ。年金の空白期間の解消が狙いであるが、施行により実質的に“65歳定年”時代を迎えることになる。4月から報酬比例部分が61歳支給になることで継続雇用を希望する人が増えると予想される。
 しかし、企業が最も懸念するのは職域の確保や人件費の増加である。特に人件費を増やしたくない企業の中には新卒を含めた採用数を減らす意向を示しているところもある。では採用数も減らさずに人件費を現状のまま維持するにはどうするのか。一つのモデルとなるのがNTTが打ち出した新人事制度である。
 昨年12月中旬。NTT労使は再雇用制度を含む新人事制度の導入で合意した。従来のNTTの再雇用制度は02年の人事制度改革で子会社が受け皿となっていた。NTT東西およびNTTコムウェア、NTTファシリティーズの4社の社員は50歳で地域子会社に転籍。定年後は子会社の再雇用制度で65歳まで働くことになっていた。
 新制度では地域子会社への転籍制度を廃止するとともに、他のNTTグループ各社と同様に2014年4月から新しい再雇用制度に移行する。新制度は従来の「欠勤日数が50日以下」といった再雇用基準を廃止し、希望者全員を雇用することになる。
 さらに処遇制度も見直す。従来は50歳で地域子会社に転籍後、給与は15~30%に減額され、定年後の再雇用賃金は200万円台前半の水準だった。新制度ではこれを300~400万円に引き上げる予定だ。
 NTT東西を含む先の4社の再雇用制度は2013年度に51歳になる社員から対象になるため、10年後の2023年度から適用される。すでに地域子会社に転籍した社員は現行の再雇用制度が適用される。最初に適用されるのは14年3月末に60歳を迎えるNTTドコモやNTTコミュニケーションなど主要4社の数百人となる。
 再雇用制度の導入で当然ながら従来以上に人件費は増える。NTTは増加する人件費原資を確保するために現役世代の賃金制度も見直すことにしている。
 同社の現行の月例賃金は「資格賃金」「成果加算」「地域加算手当」「成果手当」――の4つで構成されている。そのうち資格賃金が56%と半分以上のウエイトを占める(40歳一般職、以下同じ)。新制度はこのうち成果加算を新たに「加給賃金」という名称に変えただけで賃金の構成はあまり変わらない。
 大きく変わるのは資格賃金を約2万円減額、加給の昇給額を減額したことだ。加給の昇給額は人事評価に基づいて資格ごとに決まる。たとえば40歳一般資格1級のC評価の場合の昇給額は、現行では5240円であるが、新制度では2460円になる。
 さらに加給賃金の上限額が約11万円と低くなるために新制度の基準内賃金は41歳水準、月例賃金は43歳水準で頭打ちになるという。
 これにより52歳時点の報酬は月例賃金で年間56万円、賞与が28万円(年間5カ月の場合)の計84万円が減額されると労組は試算している。また、地域加算手当が新制度では基準外賃金となり、賞与に反映されないために13万円の減額となり、合計の減額分は97万円(13%)になるとしている。
 もちろん、全員の年収が下がるわけではない。新制度では資格賃金を圧縮し、成果給のウエイトを高めることで貢献度の高い社員に報いる仕組みに変えるのも一つの目的だ。
 NTTの人事担当者は「年功的な要素を払拭し、努力すれば今以上に高い報酬を得ることができるメリハリの効いた制度にしたのが特色。資格給のウエイトは落ちることになるが、手当を増やすなどの措置でカバーしていくことにしている」と語る。同社では減額の一部について当面は「暫定手当」として補填することにしている。
 成果部分のウエイトが高まるのは40歳前後から上の年齢層であり、以前に比べて報酬が上がる社員が出る一方、成果次第で下がる社員も発生する仕組みである。ただし、全体としては40歳代以降の賃金を抑制し、再雇用者の増加と賃金の上乗せに充てるのが大きな狙い。
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この記事のライター

溝上憲文 溝上憲文

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