2016年8月11日 更新

【コメダ珈琲店】ビジネスモデルと上場〜成功のレシピ〜

株式会社コメダホールティングス(愛知県名古屋市)が2016年6月29日、東京証券取引所市場第一部(以下、東証一部)に新規上場を果たした。コメダといえば、珈琲店を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。本稿では、上場の意義とコメダ珈琲店の魅力に迫る。

コメダグループ上場の狙いは

上場したコメダホールディングスは、喫茶店チェーン「珈琲所 コメダ珈琲店」(以下、コメダ珈琲店)や「甘味喫茶 おかげ庵」を運営する株式会社コメダ(以下、コメダ)の経営管理を行う持ち株会社だ。

東京証券取引所は日本の代表的な金融商品取引所だ。その中で、上場基準が最も厳しい東証一部への上場が認められたことは、大きな話題となった。

今回の上場は、新規株式を発行しての資金調達ではなく、コメダホールディングスの大株主であった投資ファンド、MBKP III Limitedが保有するコメダホールディングスの株式を売却する目的によるもの。

売却により得られた資金は、投資ファンドが、コメダホールディングスの買収に要した投資費用の回収などに充てるものと考えられる。

ちなみに、同投資ファンドはコメダホールディングスの株式のすべてを売却したわけではなく、一部を保有している。

上場のメリットは他にもある

コメダホールディングスが資金調達をしなかったとはいえ、同社にとり、上場には大きな狙いがある。

たとえば、同社のグループであるコメダが運営する喫茶店チェーンを「2020年末までに1,000店舗体制にする」(2016年2月期決算短信より)としている。持ち株会社が東証一部に上場したことにより、認知度やブランドが向上すれば、新規店舗用地の確保に向けた交渉なども行いやすく、事業の拡大に弾みがつくと考えられる。

さらに、会社として知名度や、上場企業であるという社会的信用度が高まれば、人手不足の中、店舗のオーナーやスタッフなど、優秀な人材の獲得につなげることが可能となる。

業績急拡大の要因は

創業者の加藤太郎氏がコメダ珈琲店を開店したのは、1968年1月のこと。発祥地は名古屋だが、2003年に初めて神奈川県にオープンしたのを皮切りに、以降、関西、東京、北陸、四国などにも出店し、現在では全店舗を合わせ、698店(コメダ珈琲店691店舗、内中国・上海1店舗、おかげ庵7店舗)を展開している(2016年6月29日時点)。

グループ全体の売上は、決算情報によれば、2016年2月期(2015年3月1日~2016年2月29日)の実績が約217億円、2017年2月期(2016年3月1日~2017年2月28日)は約237億円の売上を見込むなど、その成長は右肩上がりだ。

この成長を牽引しているのは、東日本および西日本エリアへの出店だ。

コメダホールディングスの新規公開時有価証券届出書によれば、2011年2月末には、東日本の57店舗、西日本の33店舗から2016年2月末には、それぞれ169店舗、162店舗にまで急拡大している。

東西エリアを合わせた店舗数は中京エリアの352店舗(2016年2月末)に肉薄していることからも、コメダ珈琲店は、名古屋を中心に展開してきた喫茶店チェーンから、全国展開の飲食店チェーンへと、事業を拡大させていることが伺える。なぜ、こんなにも成長しているのか。

「コメダ珈琲店」の魅力

成功の要因は大きく分け2つあると、代表取締役社長、臼井 興胤(うすい おきたね)氏は述べている。1つはコメダ独自のビジネスモデルにより、フランチャイズシステムで高い収益性を実現していることだ。

たとえば、コーヒー、パンなどを中心とした収益性の高いメニュー構成の実現や幅広い顧客層が普段使いできる店舗作りを目指し、リピーターを増やす。また、郊外に出店することで、賃料を低減化することへ取組むなどの複合的な要因が、成長につながっていると分析している。

もう1つの要因は、「お客様に第2のリビングルームとして使ってもらえるような空間を提供することを心掛けている」(東京マーケットワイド:「新規上場企業トップインタビュー」による)という言葉に凝縮されている。

具体的には、店舗に訪れる消費者に対し、他では得られない付加価値、すなわち、居心地の良い時間を提供するということだ。都会にありがちな、効率化を追求した低コストのセルフサービス型の喫茶店とは異なり、席への案内からオーダー、サービスのすべてをスタッフが行うという、フルサービスを提供する。

加えて、今やコメダ珈琲店の代名詞ともなっているスイーツ、「シロノワール」や選べるモーニングサービスなど、他店とは異なるユニークな商品を導入し、単に飲食に留まらない、「お客様にくつろいでいただく」という、「時間消費型ビジネス」を同社店舗のスタンダードとしている点が、全国で受け入れられている要因だと考えられる。

都会の喧騒の中で癒される場所

実際、東京都渋谷区の「渋谷宮益坂上店」を訪れると、まず目に入るのは、窓側に設置されているカウンター・テーブルだ。開放感もあるが、小さな仕切りを置くことで、プライベート感を演出している。

店内は、赤を基調とした暖色系のゆったりとした作りの椅子が、木のぬくもりを感じる室内と調和して、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

同時に、コメダ珈琲店では、アイスコーヒー1つの注文にも、甘さ加減の要望にきめ細かく応じている。何気ない心配りが、同店を訪れる顧客の心を惹きつけているのかもしれない。

店の近隣にはオフィスビルや商業施設などが立ち並び、平日の昼間は、サラリーマンらが足を運ぶ。フルサービスを提供するこのような空間は、安らぎを求めるビジネスパーソンに対して、訴求効果をもたらしているのではないだろうか。

フランチャイズ喫茶店の今後

20 件
AXIS記事下バナー

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう

ビズフル|働き方を変えるためのキャリア情報サイト

関連する記事 こんな記事も人気です♪

「ポケモンGO」に見るビジネスモデルと新たな可能性

「ポケモンGO」に見るビジネスモデルと新たな可能性

ゲーム、「Pokémon GO(以下、ポケモンGO)」の勢いが止まりません。拡張現実(Augmented Reality、以下AR)の技術が、ゲームプレーヤーを虜にし、企業もまた新しいタイプのゲームを利用したビジネスチャンスの可能性に熱い視線を送っています。
人工知能に奪われない仕事とは?人間の有利性を探ろう

人工知能に奪われない仕事とは?人間の有利性を探ろう

機械では代替えできなかった仕事を今やどんどん人工知能(AI)がクリアしてきています。オペレーターや窓口などでルーチン化できる仕事をいずれ人工知能がすることになるのは想像に難くありません。それでは、AIより人間に有利な仕事にはどんな職業があるのでしょうか?
スキマ時間の強い味方!ビジネスニュースアプリ【5選】

スキマ時間の強い味方!ビジネスニュースアプリ【5選】

アプリは何を愛用していますか?通勤中やお昼休みなど、ちょっとしたスキマ時間のある時にチェックするには、とっても便利なニュースアプリ。今回は、ビジネスニュースが読めるニュースアプリ5選を、その特徴とともにご紹介いたします!
企業経営に甚大な被害も!「情報漏えいリスク」を日頃から意識する

企業経営に甚大な被害も!「情報漏えいリスク」を日頃から意識する

企業経営に「情報」は不可欠ですが、取り扱いがなかなか難しいものです。企業が日々活動を行っていると、取得する情報は自ずと増えていきます。ここで問題となるのが「情報管理」。もし、情報が外部に漏れてしまうと経営危機にまで発展しかねないほどの被害に至るケースもあります。この記事では、情報漏えいの実例を見ながら、その対処法についても見ていきましょう。
「買い物難民」を救う?「ドローン宅配サービス」について知る

「買い物難民」を救う?「ドローン宅配サービス」について知る

無人航空機「ドローン」という言葉を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。「ドローン」とは、無人で遠隔操作や自動制御が可能な飛行機のこと。公共の場で「ドローン」を飛ばすことは法令に抵触するケースもありますが、アメリカなど「ドローン」が大活躍している国もあります。この記事では「ドローン」による宅配サービスの動きについて解説します。

この記事のキーワード

この記事のライター

松本美菜 松本美菜

プレスリリース