2017年8月14日 更新

年齢や勤続年数で給料が上がる「年功賃金制度」 ポジション不足で若手社員のモチベーション低下も

日本型雇用の中核に位置付けられている「年功賃金制度」。リーマンショック後、いったん成果主義へと舵を切った企業は多かったものの、は失敗に終わり、「年功賃金制度」へ戻ったケースも多々見られた。とはいえ、「年功賃金制度」は、若者の働く意欲の減退につながっているという指摘や組織の活性化の妨げになるという声を受けて、変革を迫られている。この記事では、「年功賃金制度」のメリット、デメリットを概観しよう。

企業内の賃金制度を今一度理解する

画像素材 - PIXTA(ピクスタ)

大半の日本企業は「職能給」を採用している。「職能給」とは、「職務遂行能力」を評価して賃金を決定するもの。「職能要件」と呼ばれる一定の条件を満たすことにより、上位層へ昇進することができる。

「年功賃金制度」を採用している企業の場合、この「職能給」だけでなく「年齢給」や「勤続給」も加味して賃金が決まる。

つまり、
「賃金」=「職能給」+「年齢給」+「勤続給」

「年齢給」とは、文字通り、年齢によって決められる賃金のことだ。例えば、20歳なら2万円、30歳なら3万円といったように、企業内には独自の「年齢給」テーブルがあり、機械的に決定される。すなわち、年齢が低ければ低いほど、「年齢給」は少ないという話だ。

「勤続給」は、勤続年数によって決められる賃金のことだ。古参社員ほど勤続年数が多いため、「勤続給」では有利になる。つまり、中途社員の場合、どんなに頑張っても「勤続給」では追い抜けないことになる。中途入社では、賃金が下がるケースがほとんどだが、この「勤続給」が低いこともその要因のひとつといえよう。

「年功賃金制度」のメリットとは?

さて、「年功賃金制度」の構成要素を確認したところでメリットについて概観しよう。「年功賃金制度」の主なメリットは二つだ。

一つ目は、毎年給与が少しでも上がるという「安心感」だ。一般的に人は年を取るほどお金が必要になる。例えば結婚や子育て、介護などのライフイベントに直面し、お金を工面せざるを得ないケースも多々あるだろう。

そんなとき、会社に所属していれさえすれば年々給与が上昇するという「安心感」はその人にとってとても嬉しいものだろう。たとえ能力があまり向上していなくとも、毎年確実に手取り額が増えていくのである。

二つ目は「社員の帰属意識向上に役立つ」ことだ。新卒一括大量採用が主流となっている日本企業の場合、入社当初から給与に急激に差をつけるのは実は望ましいことではない。というのも、最初から社員間の優勝劣敗が見えてしまうと、仕事へのモチベーションが低落してしまう傾向があるからだ。

そのため、30歳~35歳くらいまでは仕事ができようができまいが社歴に応じた給与が支払われるケースが多い。同等の給与にしておくことによって、「皆同じ」という意識を社員間で共有させ、働くモチベーションを維持させることが可能となる。

この二つのメリットが効果的に機能することによって、社員の離職が減り、定着率の向上につながっているのだ。

「年功賃金制度」のデメリットとは?

「年功賃金制度」は、社員が安心して働くための有効な方策だった。しかし、デメリットが顕在化した昨今、「年功賃金制度」から「成果主義」へと舵を切る企業も存在している。「年功賃金制度」にはどのようなデメリットがあるのだろうか。主なデメリットは二つ。

一つ目は「総人件費が上昇する」ことだ。当然のことだが、人は年々老いていく。年齢を重ねるごとに給与が上昇していく「年功賃金制度」の場合、毎年総人件費が上昇していくことになる。

かつての日本、例えば高度成長期のように収益を出しやすい時代ならいざ知らず、低成長時代においては人件費の抑制は喫緊の課題。「年功賃金制度」は低成長時代にはそぐわないものという意見が方々で出るのも頷ける話だ。

二つ目は「若手のモチベーション低下につながる」ことだ。一般的に「年功賃金制度」を採用している企業における社員の平均年齢は40歳以上。このような企業の場合、若手社員が上位のポジションにつけるチャンスは少ない。というのも、「年功賃金制度」のもと、上位階層に位置する古参社員が多数存在しているからだ。

「年功賃金制度」は社歴や年齢を評価するもの。若手社員の場合は、社歴、年齢とも低いため、必然的に給与が低くなってしまう。

もちろん、人が働くモチベーションの源はお金だけではないだろう。しかし、若手社員が「頑張れば報われる」と思えない企業でないと、熾烈を極める競争社会を勝ち残っていけないと思える。

それでも「年功賃金制度」はなくならない

「年功賃金制度」のメリットとデメリット、理解していただけただろうか。物事には良い面と悪い面があり、それらを理解したうえで比較衡量するのが望ましいでしょう。

「年功賃金制度」と「成果主義」はよく比較されますが、どちらが良い悪いと優劣をつけるものではありません。

賃金制度は企業の人事ポリシーを表すもの。「年功賃金制度」を採用しているということは、長期に安心して働けることを暗に表現している。

賃金制度を考察することで、企業がどのようなことを考えているか推測することも可能。ぜひ企業選びに活用してほしい。

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楠山拓己 楠山拓己

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