2016年11月24日 更新

ビジネスリーダーへの影響大 「裁量労働制」の適用拡大で働き方はどう変わるのか?

安倍内閣肝いりの「働き方改革」。この改革においては、「労働生産性の向上」や「長時間労働の是正」などが論点になっている。これらの論点を語るうえでホットなキーワードといえば「裁量労働制」だ。この記事では「裁量労働制」の概要について解説する。

そもそも「裁量労働制」とは何か?

画像素材 - PIXTA(ピクスタ)

「裁量労働制」とは、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ定めた時間だけ働いたとみなす制度。

例えば、1日の労働時間を8時間、週の労働時間を40時間と決めたとしよう。「裁量労働制」のなかでは、1日10時間働いたとしても、1日4時間しか働かなかったとしても1日8時間勤務したとみなしている。

「裁量労働制」は、文字通り、仕事の具体的な進め方や時間配分を労働者に委ねるもの。適用対象は研究開発者や証券アナリストなどの専門職になる。

これらの仕事は、時間に比例して成果があがる仕事(例えば工場での生産など)とは異なり、時間をかけたからと言って成果が上がるわけではない。それに、成果は労働者個々の専門性に依拠する部分が大きい。こうした“成果で評価したほうが適当な労働者”にピッタリな制度が「裁量労働制」だ。

「裁量労働制」には二種類存在する

「裁量労働制」には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の二種類がある。それぞれ概要を説明しよう。

1.専門業務型の裁量労働制
いわゆるクリエイティブな仕事で、次の19業務に限って導入することができる。

➀新製品、新技術の研究開発等の業務
②情報処理システムの分析又は設計の業務
③記事の取材又は編集の業務
④デザイナーの業務
⑤プロデューサー又はディレクターの業務
➅コピーライターの業務
⑦システムコンサルタントの業務
⑧インテリアコーディネーターの業務
⑨ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
⑩証券アナリストの業務
⑪金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
⑫大学における教授研究の業務
⑬公認会計士の業務
⑭弁護士の業務
⑮建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
⑯不動産鑑定士の業務
⑰弁理士の業務
⑱税理士の業務
⑲中小企業診断士の業務

ちなみに、筆者はかつて出版社に勤務していたが、この「専門業務型裁量労働制」が導入されていた。クリエイティブ系の仕事に就いている人の場合、この制度は珍しいものではないかもしれない。

ホワイトカラーの働き方に影響を及ぼす「企画業務型裁量労働制」

2.企画業務型の裁量労働制

ホワイトカラーが対象となっている。企画立案、調査分析などを行う労働者に限って導入できる。対象業務は下記の8業務。

➀経営企画部署における経営計画策定業務
②経営企画部署における社内組織編成業務
③人事・労務部署における人事制度策定業務
④人事・労務部署における社員教育・研修制度策定業務
⑤財務・経理部署における財務計画策定業務
➅広報部署における広報計画立案業務
⑦営業部署における全社的営業戦略策定業務
⑧営業部署における生産計画策定業務

「企画業務型裁量労働制」は、「専門業務型裁量労働制」と異なり、導入ハードルは高い。「専門業務型裁量労働制」の場合は、労働者個々人から同意を得る必要はない。

しかし、「企画業務型裁量労働制」の場合は別。労働者個々人から適用について同意を得る必要がある。また、導入するためには、労使委員会を別途設置し、労使委員会の5分の4以上の賛成がなければならない。

「企画業務型裁量労働制」の場合は、働きすぎが懸念されることから、このような導入するにはこのような厳格な手続きが必要となっている。そのため、現在のところ、導入されている企業は少ない。

「裁量労働制」が導入されると残業代がなくなる?

「裁量労働制」は、前述の通り、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ定めた時間だけ働いたとみなすもので、労働者に仕事の進め方を委ねることが必要。成果にフォーカスする働き方のため、「裁量労働制」を導入すれば残業代を支払う必要がないと間違って理解している経営者もいる。

例えば、所定就業日の労働時間を1日9時間とみなした場合で考えてみよう。この場合、労働基準法で定めた1日の労働時間8時間を超過しているが合法と認められている。そのため、9時間働いても残業代は支給されない。しかし、10時間働いた場合は、たとえ裁量労働制が導入されていても1時間分の残業代が支給される。その理由は明快で、このような取り扱いにしないと、労働基準法の趣旨(労働者を守る)を逸脱した働き(働かせ)過ぎを助長する脱法行為になってしまうからだ。

また、いくら労働者に時間管理が委ねられると言っても、企業が労働時間の把握を放棄してはならない。

企業は労働時間を把握し、労働者が働きすぎないよう健康確保措置を講じることや残業代の支払いが義務付けられている。

筆者が以前勤務していた出版社では、「専門業務型裁量労働制」が導入されていたが、労働時間管理をキッチリと行っていた。

休日を自分で決められる反面自己管理が不可欠

「裁量労働制」のもと働いている労働者の場合、極端な話、成果さえ出していれば、オフィスに出社しなくてもよい。筆者は、編集者として勤務していたが、週に一日出社していただけであった。

知人の研究開発者も同じ状況であった。彼女は週に二日間休みを取っているが、主に平日に休んでいた。

「裁量労働制」が適用された労働者は、このように休みを自分で決めコントロールできる反面、自己管理の能力が高くないと、ダラけてしまい、思うように成果を上げることができない。

フレキシブルな働き方のなかでも成果が出せる。そんな労働者にこそ好ましい働き方だろう。今のところ、「裁量労働制」(特に「企画業務型裁量労働制」)を導入している企業は少ないが、労働基準法が改正され、導入ハードルが下がれば一気に拡大する可能性もある。ビジネスリーダーであるなら、「裁量労働制」の動向を注視すべきだ。
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楠山拓己 楠山拓己

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