2017年10月18日 更新

安倍内閣の「働き方改革」で外国人労働者が激増する?

2016年10月21日の衆院法務委員会において、介護現場への外国人の受け入れ拡大に向けた法案が可決された。安倍内閣の「働き方改革」の1つに「外国人労働者の受け入れ促進」があるが、その象徴的な動きと言えるだろう。この記事では、その現状と課題について解説する。

技能実習とはどのような制度なのか?

画像素材 - PIXTA(ピクスタ)

技能実習の対象職種は現在74ある。技能実習は資格などを持たなくても来日が可能で、農業や製造業、建設業などの分野が対象となっている。筆者が技能実習をよく見かけるのは、水産加工場など重労働により日本人があまり集まらない分野である。

介護は、これまでEPA(経済連携協定)の枠組みのなか、タイ、フィリピン、インドネシアに限って入国を認めてきた。本国で看護ほか専門知識を学んだ者のみ入国できる体制で、入国後は介護福祉士資格の取得を求められる。つまり、日本語の読み書きを一定程度マスターした優秀な者のみが働き続けられる体制なのだ。

深刻な人材不足に直面している介護業界

超高齢社会の進展により2025年、介護人材は37.7万人不足すると言われている。政府は、介護人材の復職を促す「再就職準備金の支給」や介護福祉士資格を持ちながらも介護業界で働いていない「潜在介護福祉士の復職支援」などを行っているが、あまり効果は得られていない。最近は、すでに引退した高齢者を介護職として就職させようとする動きも目立つ。

こうしたなか、政府は外国人技能実習生の受け入れを介護にまで広げると明言した。EPAで入国したタイ人、フィリピン人、ベトナム人は介護現場でも評判がよく、本人たちも働きがいを感じており、winwinの関係となっていることもこの背景にあるだろう。

技能実習とEPAはまったく違う制度

外国人を受入れ、日本で働いてもらうという面だけ見れば、技能実習もEPAも同じに見えるだろう。しかし、枠組みはまったく違うので注意が必要だ。

技能実習は前述した通り、特別な資格がなくても入国できる。最長3年間、技能実習生が企業との雇用関係のもと、働く制度だ。一方、EPAは、国同士の特別な関係のもと働く制度。

どちらも受け入れ側は、労働時間の管理や日本語研修などを行う必要がある。しかしEPAは監理団体が労務監査を行うなど労働条件に関してかなり厳しく取り締まっている。企業だけに労働時間管理を任せてしまうと、過重労働が発生する可能性があるためだ。

ひとりのフィリピン人男性が心疾患で過労死

2014年4月、ジョーイ・トクナンさん(27)が死亡。1ヶ月の残業時間は78時間半~122時間半に及んでおり、今年10月に岐阜労働基準監督署は過労死と労災認定した。

勤務先は、岐阜県にある鋳物製造会社。稼いだお金はフィリピンにいる家族にほとんど送金していたという。

技能実習の場合、労務管理は企業に一任される。労働環境が過酷な「ブラック企業」に入ってしまった場合、このような悲惨な結末もあり得る。「どうせ何も知らない外国人。使い潰してしまおう」という悪徳経営者の餌食になってしまった。

人手不足が慢性化している日本企業

平成28年版労働経済白書によると、約半数の企業が人材不足に直面しているという。また、人材を調達しようと募集をしても応募さえないのが実態だ。

応募者がいない理由は、労働条件などさまざまなだが、超高齢化に伴う労働力人口の減少が大きい。労働力人口が減るということは生産量も減るということ。つまり、経済成長率の低下につながるという話である。

安倍内閣の最大のテーマは「経済成長」。人口減社会では、生産量の拡大は望めない。だからこそ、手っ取り早い人材調達法である「外国人労働者の受け入れ促進」を掲げているのだ。

外国人労働者を受け入れるメリット、デメリット

外国人労働者を受け入れるメリット、デメリットを確認しておこう。

【メリット】
1.国際色が豊かになる
グローバル化が進展するなか、さまざまな外国人と交流することは日本人にとって国際感覚を身に付けるうえでプラスだ。

2.労働力の補完
現在のところ、このメリットが前面に押し出されている。働く日本人がいないなら、外国人を入れてしまおうという単純な思考だ。

【デメリット】
1.日本人の仕事が奪われる
外国人労働者のほうが高スキルであれば、わざわざ日本人を雇用する必要などないだろう。結果的に日本人が職にあぶれる可能性が出てくる。

2.コミュニケーションに苦慮
コミュニケーションがうまくいかず、労働災害や企業収益の低下をもたらす可能性もある。経営者に在留に関する知識がない場合、不法就労、不法滞在を招くおそれもある。

今後の展開を注視する必要がある

トルコを中心とした外国人を多数受け入れて来たドイツは、移民排斥へ方向転換している。自分たちの仕事が失われることを恐れたのだ。

自分たちにとって都合のいいように外国人を使おうとすればどこかで問題を来す。外国人技能実習生の過労死はその最たるものだろう。

安倍内閣は順次外国人労働者の受け入れを進める方針。外国人労働者の増加は、社会構造の変化までもたらす可能性もある。今後の動向を注視しよう。
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楠山拓己 楠山拓己

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